このブログの本来の目的だった、小説を載せます。
まだ完成していない話だし、いつ完成するかは分かりませんが、がんばりたいとおもいます。

  1. *登場人物紹介

エール・うさえモン うさちゃん。ギャンブルで全財産と左目を失い、ヴルーベリ家に転がり込む。兎の妖精。

ショコラ・ヴルーベリ ヴルーベリ家のお嬢様だが、頭が弱い。旧人類。

ジュリアン・ヴルーベリ じゅりちゃん。カッパ。ショコラの従兄弟であり、婚約者でもある。ヴルーベリ男子学院の校長。旧人類。

ニーナ ショコラの身の回りの世話をしているメイド。旧人類。
ロゼッタ・ゲルツェナ ショコラの守護妖精。蛇の妖精。今はパラレルワールドにいる。

姮娥 暮天 玉宮に住んでおり、パラレルワールドへの入り口の番人をしている。水の妖精。

セヴァスチャン・ヴルーベリ うさえモンとショコラの長男。何故か人間として生まれる。旧人類。

ルーン・ぴょん吉 ぴょんちゃん。うさえモンとショコラの次男。兎の妖精。

マーク・ミミたん うさえモンの妹分。兎の妖精。

  1. *冒頭

全てを失った。金も、農地も、仲間も、そして左目も…。これからどうすればいいのだろう。気がつくと俺は人間界に来ていて、目の前には立派な石造りの屋敷がそびえたっていた。

  1. *第一節 ショコラお嬢様

夜になるのを待ってから屋敷に忍び込んだ。もしもこの屋敷にある金銀財宝なり、美術品なりをフェアリーランドに持ち帰れば、俺の農地が取り戻せるかもしれない。
 俺は鼠に化けて廊下を駆け進んだ。ドアから女が出てきた。ランプを手に持っている。まだ子供らしかったが、メイドらしい服を着ていた。俺はドアの隙間から部屋の中に入った。やけに広い部屋だった。部屋の中央にはカーテンつきの豪華なベッドがあり、ベッドの隣の小さな机にはランプには明かりが灯っていた。今時ランプなんて、火事にでもなったらどうすのかと思いつつ、小バエに化けてベッドに近づく。ベッドの中には、長い髪を2つに蜜編みにした女の子が寝ていた。
 可愛いと思った。俺はどういう訳か女にはモテず、告白してもいつも断られていた。でも目の前にいる女の子はお人形さんのように可愛かった。思わず変身をといてじっくり見入ってしまう。そして何も考えずに彼女の柔らかい唇にキスをしてしまった。女の子とするのは初めてだった。こういう言い方をすると、男とならキスしたことがあるのかと思われてしまうが、そういうわけではない。ただ、女の子と口をきくこともない毎日を過ごしていた俺にとって、彼女は暗闇を照らす月のようにまぶしく映った。
お嬢様はそっと目を開けた。
「あ…」
 彼女の声に思わず兎の耳が反応して動いた。
「だ・れ?」
 彼女の口がかすかに動いた。多分そう言ったのだと思う。
「俺?俺はうさえモン。」
「うさちゃん?」
「うさえモンだって。」
「うさちゃん。」
 女の子は熱でもあるような声をしていた。
「で、お前の名前は?」
「ショコラ。」
 ああ。ぴったりだよ。できれば髪型も密編みとかじゃなく、縦ロールの方がお嬢様らしいのに。
 
「うさちゃん、空、飛べる?」
「飛べるよ?背中の羽根は飾りじゃないんでね。」
「あたしも、あたしも。」
「お前も飛べるのか?」
「うん。夢で。」
 思わず口元がゆがんだ。
「夢は夢だよ。現実じゃない。」
「でも。」
「そんなに飛びたいなら俺が飛ばせてやるよ。」
「本当?」
「ホント、ホント。でもお願いがあるんだけど。」
「お願い?」
「そ。ショコラちゃんのパンツを俺にくれない?」
「いいよ。」
 じゃないっ!冗談で言ったはずが、本気にさせてしまった。もしもう一度お願いできるなら、『おまんこ見せて』にするんだった。
「あそこに…パンツ。」
 ショコラお嬢様は引き出しを指差した。
 「ん。ありがとう。」
 俺は引き出しを引き、彼女のパンツを見た。どれも白くて大きいパンツで、全然色気がなかった。イチゴ模様のパンツとか似合いそうなのに。
 俺はひとつだけ手にして、ポケットの中に押し込んだ。

「ねえショコラ、お前病気なの?」
「病気なの?」
「あのなあ俺が知るかよ。」
 俺はとりあえず彼女の額に手を当てた。
「う〜ん。熱はないみたいだな。なあ、起きれるか?」
 ショコラは黙って俺を見ていた。黙っているとますます人形みたいだった。
この屋敷を出たら人形になったりして。
俺がしばらく黙っていると、ショコラはゆっくりと目を閉じて眠ってしまった。
「こら〜〜!寝るんじゃな〜〜い!」
 ショコラは再び目を開けた。
「起きた。」
「は?」
「今起きたよ。」
「違うだよ。それは目を覚ましたっていうんだよ。」
「おやすみなさい。」
「じゃないだろっ!」
 ショコラは再び寝ようとしていたが、その都度怒鳴られた。
「ほら、起きてごらん。」
 俺が掛け布団をめくると、彼女は両手を前に突き出して。指を動かした。
「あーあー。」
 それしか言わなかった。
 俺は彼女の両手を引っ張り、やっとのことで彼女を起こした。彼女は体が不自由で、ベッドから出られないらしい。健康だけが取柄の俺はどうしたらいいのか分からないし、リアクションの仕方にも困る。
「お前大丈夫?」
「うん。」
 俺がベッドの上に座ると、彼女は俺の手の上に両手を重ねた。思わず顔が赤くなってしまった。これでは童貞だということがばれてしまう。以前純愛禁止区域でファイト一発してしまったので、実際には童貞ではないが、童貞のようなもんである。
「うさちゃん。触りたいの。」
「チンポを?」
 思わず叫んでしまった。落ち着け、俺。こんな可愛いお嬢様がそんなこと言うわけないじゃないか。確か妖精には人間の心が分かるはずなのだが、彼女の心は真っ白で、生まれたばかりの子供を相手にしているみたいだ。
 ショコラお嬢様は、ゆっくりと右手を伸ばし、そのか細い指で俺の兎の耳を触った。
「へ?」
「うーさちゃん。」
 ショコラは笑った。そして俺の耳を何度も何度も触った。
「こっちのおめめどうしたの?」
 彼女は俺の左目にある眼帯を指差した。
「なくなったんだよ。」
「早く見つかるといいね。」
 ショコラは優しくなでた。俺は兎のぬいぐるみに化けて彼女の膝の上に上った。彼女は俺を抱き上げ、そのまま寝入ってしまった。俺は圧死覚悟で彼女と一夜を共にした。できれば胸が大きければよかったのだが…。
 ごめんな、ショコラ。すぐに空が飛べなくて。でもいつか必ず飛ばしてやるから。きっとだよ。